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***Honeyholic***

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アキレウスの翼

貞操概念のゆるゆるな13代と14代の話。

アキレウスの翼




夜の静寂にさらさらと時間の流れる音すら聞こえたような気がした。



いつだったか、背中に浮き出た肩甲骨は翼の名残なのだと聞いたことを思い出す。尤も言っていた女の名は思い出せないが。


勿論、生物学的にみてそんなことはあり得ない。
ホモサピエンスに翼があったという歴史など無いのだ。
その様な与太を大真面目に信じるやつはジュニアハイから再履修をすべきであるし、ましてや絶対に己の部下には要らないし上官であれば尚のこと可及的速やかに二階級特進させてやるべきだ、公共の福祉のために。
しかしどうだ。隣で背を向け規則正しい呼吸に合わせて蠢く其れは。



はて、大地を蹴るアキレウスの背に翼はあっただろうか。


昨日より公私共に少々無体を働いた自覚はあるがその程度で壊れる男ではない。
まだ微睡みの中にいる背骨を、その翼をそっとなぞった。
歴戦の戦士故に皮膚の傷跡は数知れないが均整のとれたリンツの身体は美しい。
パワーファイター型のブルームハルトは言うに及ばず総合型と言われる己とも違う。俊敏性を存分に活かすしなやかな肉体は実に好ましいし肌の質感も申し分無い。


「長いこと貴官の隣にいるとあぁも常識人にならざるを得ないものかねぇ」
いつだったか司令官閣下にぼやかれたことがあったが、俺はヤン・ウェンリーも案外人を見る目がないなと内心心配になったものだ。

皮肉にも捨て去った故国の民の特徴を色濃く纏った風貌にツリ気味のキツい眼差し、折り目正しい所作に細かいところへの気配り、コイツの上辺しか知らなければ生真面目で取っつきにくい、或いはドライ、果ては冷酷だとも捉えることだろう。
実態を知るものからしたら噴飯ものの話なのだが。
場と相手を見極めているからこその評判で、実際のところと言えばリンツの日常の所作はお世辞にも行儀が良いとは言えない上に存外好戦的でかつ起爆装置の在処が解りづらい。ご機嫌だった次の瞬間には相手をひと蹴りで沈めているなんてこともザラなのだ。
そもそも、配属3日目で上官の鼻っ柱を物理的にへし折って(この一件は正当防衛と判断された)扱いに困ったそのまた上官が俺に押し付けて来たのが付き合いの始まりだ。
記念すべき初対面はモンキーハウス(営倉)という笑えない代物だった。
それから紆余曲折の末にこうしてベッドを共にするようになったのだから、そんなところも俺からしたら可愛いというべきか。


知らず目を細め愛玩動物にするようにその肌の感触を楽しんでいると身じろぎを始めた。
ご機嫌を伺いながらも襟足を繰る手は止めない。この様子なら恐らくは大丈夫。
薔薇の騎士連隊の面々ならばその身をもって学習しているが、リンツの寝起きもすこぶる悪い。
只でさえキツい眼差しを半目でギロリとやるものだから、同衾するような女性があれば同情を禁じ得ない。
意識レベルの低いときの行動にまで責任は持てないというのが本人の弁だ。

抱き込むように引き寄せ飛びきりの声で囁いてやる。
「お目覚めか?プリンツェスィン(姫君)」
去り際には耳輪をそろっとひと舐め。
「起床時刻にはまだ早いようだが?」
引き締まった腿から尻、そして骨盤をなぞって恥骨へ、明確な意思をもって。
すると薄い唇からはぁっと艶めかしい吐息が漏れる。有能な副官は睡魔の手の内、微睡みの淵にあっても的確に俺の意図を読み取ったらしい。
するりと向きを変えると肩に手を回ししなだれかかるように右脚を俺の腰に絡めてきた。
上出来だ、女ですらこんなに婀娜っぽいのは そうそうお目にかかれるものではない。
「ほぉ、昨晩のじゃ足らなかったか?随分と煽ってくれるな」
「まぁ、気持ちいいのは嫌いじゃないですし、結果は同じなら楽しんだほうが良いかと思いまして」
伸びをするようにして耳許に口を寄せると囁いた。
「それに、ヒンメル(天国)を見せてくださるんでしょう?ねぇ、閣下」





発情期の性に飢えた獣よろしく覆い被さるようにして背後から思う様蹂躙する。
皮膚の下の肉のぶつかる打撃にも似た音と粘着質な水音、荒い息遣いと掠れ気味のファルセット、視覚のみならず聴覚までもが思考に靄をかけ侵食していく。
昨晩からたっぷりと可愛がった後孔の際ががぎゅうぎゅうと逸物を締め付けたかと思えば内腔では熱い粘膜が絡み付く。女の其れとは違う、気を抜けば持っていかれるようなその感覚に理性が剥ぎ取られる音が聞こえる。

被虐のケが有るのかリンツは手首をガッチリと掴まれたり、または体重を乗せて身動きができなくなるような拘束をされて致されるのが感じるのだという。
が、今は生憎とリクエストに答えてやる気は無い。代わりにグリッと浮き出た肩甲骨に噛みついてやった。

「んっ……くぅっ………ぁあっ!」

喉元をこれでもかと反らして狂おしく身悶える。
今のリンツには痛みですら快楽の一助でしかないようだ。

二度、三度と歯を立てる。
酷い有り様だろうが知ったことか。
その翼を噛み千切ってやりたい、 地に引き摺り下ろしてやりたい、あぁ願わくばそのまま縫い止めてッ!…


手加減など許さないと煽られるがままにリンツの身体を正しく貪り、どちらのものか解らぬ体液や正体を究明しようとも思わない液体にまみれて遂情した。



「アンタ、なにしてくれてんですか?」
情事後の気怠さを纏いつつ首だけを捻って剣呑な視線を向けてくる。
今、出動命令が出たら俺は死にますねだと?
フン、万一、お前がヴァルハラの門を潜るようなことがあったなら、その時は苦情のひとつでも受け付けてやるさ。
リンツ、翼なんぞ隠し持ってるお前が悪い。
お前は陸戦隊員らしく泥の中を這いずり回っていればいいのだ。

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